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2004.10.04

何をするのも結局は「人」

先月までのスーパーハードワークを無事に完了し、
数日間の休みを得て自分の部屋に帰ってきたが時間はあっという間に過ぎ、
疲労感の残る身体のまま、また別の現場に飛ばされて流されてきた。

ここの現場は某県の某半島、その根元に漁港町がある。今は秋刀魚が美味い。
ここで働く多くの人はそこや隣町から車や社バスに乗り通勤しているが、
その現場は実に辺鄙な所にあって、130近くのタイトコーナーの先に在る。
1号機から3号機までの原子炉があって、今回の自分の仕事は1号だ。

仕事の忙しさは前の現場と大差ない。休み無しで走り回り、身体も頭も
フルに使って、夜に宿に着くとヘロヘロになって布団に倒れこむ日々だ。

今日は初めて早く帰って来た。21時前に帰れるなんて夢の(≒嘘の)ようだ。

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ここには前回の現場のような会社の寮が無い。辺鄙な地方の漁港町故に
都心にあるようなまっとうなビジネスホテルのような整備された宿はない。
(S県にある現場の近所にはたくさんあったりするのだが・・・)

ここある宿泊施設は「旅館」と、「民宿」と、そして「下宿屋」だ。
原発定検工事期間はワラワラと沢山の技術者や職人が集まってくるので
小さい漁港町の宿泊設備は少しでも良い所からどんどん埋まってくる。

自分らのチームがやってきたのはさほど遅くなかったにもかかわらず、
普通の旅館は満室で、小綺麗な民宿も満室、空いてたのは「下宿屋」だけ。
一泊4000円で、大きな民家の二階に増築された和室を半分借りた。
ここは障子と襖だけで仕切られた空間なので施錠する事すら出来ない。
隣室に陣取った同僚とお互いの部屋に居ながら会話出来る、と言えば
大体の状況が理解してもらえるだろう(苦笑)

まあ音が筒抜けなのは構わないが、そいつのタバコの匂いが襖の間から
流れてくるのが一番辛い。前の宿泊者が吸った場合に部屋に染み付いた
ヤニの匂いはまだ耐えられるけど、新鮮な匂いが漂うと不快で眠れない。
そんな事情を話し、寝しなは吸わんでくれと頼んだら快諾を得た。感謝。

フロは下宿屋の家族が使ってるフロをそのまま使うし、メシは一階の
大広間(とはいっても12畳位の田舎造りの普通の広間だ)で出してくれる。
隣ではここの家族がメシを食っている。ここに約三週間ほど滞在して、
前回同様ハードな現場仕事に従事するのだ。

快適とは言い難いが、キャンプツーリングに比べれば夢のような空間だ。
北海道の無料ライダーハウスと比べれば上等すぎる、贅沢な事は言えない。
欠陥人間も仕事や旅であちこち動き回っていれば棒に当たる』、
じゃなくて良い宿に当たる事もあれば、こういう所に当たる事もあるのだ。
仕事は泊まってる宿の質でやるわけじゃない、どんな所でも全力を尽くす。
それに今時こういう経験はそう滅多に出来るもんじゃないしねっ(^◇^)♪

ちなみに部屋には内線も外線もない。この投稿は携帯電話で9600bpsで
ダイヤルアップしてから投げている。投稿画面を出してから
メモ帳で書いたこの文章をコピペして投稿するのに数分かかるのだが
テキストだけだからいいや、この下宿では他にする事も無いし(苦笑)

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で、現場事務所に入ったら、自分らのチームは北向きの薄暗い事務室
(と言うより倉庫っぽい)を宛がわれ、そこを本拠地とする事になった。

部屋にあるのは折りたたみ長机が4つとパイプ椅子、そして黒電話が一本。
…今時の若者は黒電話って何だかわからないんじゃないだろうか?(苦笑)
21世紀になって、この厳つい重厚感と回すダイヤルの付いたシロモノに
お目にかかるとは思わなかった。しかも外線にかけられないでやんの。

FAXも無いし、LANも引かれていないからメールも、ネットワーク接続の
プリンターも、当然WWWブラウザーなども使えない。PCはスタンドアロンで
使わざるを得ない。しかも困ったことに携帯電話の電波も届かないし
構内で使われる内線PHSも繋がらない。

今時こんな環境で事務仕事をするとは思わなかったよ、マジで(^◇^;)
でも、違和感があったのは初日だけで、それ以降は近代的インフラの無い
人と、メモと、ポールペンと、電卓代わりのPCだけの仕事にすぐ慣れた。

そもそもサラリーマンが近代的武装をするようになったのはここ20年位で
それ以前は、例えば高度成長期の頃のサラリーマンは手書きの報告書や、
フルスカップに書き込んだデータを手書きロットリングでグラフにして、
黒電話一本で連絡をとりながら仕事をしていたのだ。

メールが無ければ、携帯電話が無ければ、PCが無ければ仕事が出来ない、
なんてのは実は単なる言い訳に過ぎないんだな、だって仕事をするのは
メールでも、携帯電話でも、PCでもなく「人間」そのものなんだから。
それ以外のものは単なる道具であって、無いなら無いなりにあるものを
使いこなしてやれば仕事ってのはそれなりに出来るもんなんだね、感動。

これは自分の日々の暮らしで心がけていること、つまり物や金に依存せず
手持ちの少ないリソースをいかに駆使して、知恵を使って生きるか、
…に通じるものがある。つまりやろうと思えば、必須と思われる道具類が
そろって無くても、または全く無くても、どうにかなるもんなんだね。

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逆にそういった便利なインフラが無いことで、チームに今までよりも
人と人とのコミュニケーションを積極的に取るような雰囲気が出てきた。

メールでしていた連絡は、外線が繋がる電話を借りに行き即電話したり、
同じ発電所内にいる人ならば、その人の所に行って直接話しをしたり、
手書きのメモを取るのが面倒だから、どんどん要約する癖がついてきて、
結果無駄な項目が一切無いすっきりまとまった打合せが短時間で出来たり、
CADが使えないから手書きのラフな図をたくさん書き、説明するために
必要な知識を貪欲にかき集めて毎日何度もチーム内でプレゼンテーション
するもんだからどんどんメンバーのレベルが上がってきた。

同じフロアにいて、同じ島にいる隣の同僚とパーティションで仕切られ
個人の空間を保持出来る今時のオフィスと違って、大部屋での仕事は
メンバーの数だけハモる共鳴効果のように次元が上がって行くのだ。
…そっか、昔のサラリーマン達は、こうやって仕事をしていたんだな。

今の主流にはなれないだろうけど、この仕事の仕方は非効率のようで
実は凄く効率がいい事に気が付いた。

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要は仕事は「道具を使ってする」、のだが、様々な便利な道具が増え
気が付いたら「道具を使うこと=仕事をする」というような勘違いを
自分はしていたんじゃないだろうか?
電話一本、メモ一枚あればそれで出来ることはLANに繋がったPCと
携帯電話を持ってやれる事の8割はカバー出来るんじゃん。
日々の奇人変人的節約貧乏暮らしとまったく同じだな、こりゃ(^~^)

…実はこれ、仕事だけでなく、前述の下宿屋も同じなんだよね(^^)

ここの家族と世間話をしながら飯を食ってると色々な話が聞けて面白い、
同じ所に泊まっている人達とも気楽に会話するように仲良くなると、
鍵がかからない部屋に荷物を置いておいても全然不安を感じない。

個人のプライバシー保持と言う点では不便だけど、それを失う事で
余りある「何か」がここにいると得られる、その点はビジホより良い。

本当はそれだけでなく「夫婦」や「家族」ってんのも同じなんだよなぁ

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ちなみに現場は天井の高い高い4階の建物の4階に装置を組んである。
ここは古い施設なのでなんとエレベーターが無い。何も持たずとも
一気に昇り切ると軽く汗をかくが大きな装置や鉛遮蔽を抱えて昇ると
拷問か懲罰か、と思うほどしんどい。途中で一休みしないと辛い。

インターネットも、メールも、携帯も、FAXも無くてもかまわない。
…けど、エレベータだけは仕事に必須だな、うんうん(-_-;)<ばき

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