« 事故る | トップページ | 家族 »

2004.11.26

「ありがとう…」 by KOKIA

久々の事故で重傷を負い、当日の夜、痛さでなかなか寝付けず、ずっと考えた。

目を閉じると事故の瞬間がスローモーションで鮮明に蘇る。
あの時こうしていれば事故にはならなかった、とか、あと少しずれたら軽くて
すんだとか、当ると判って自分でリヤロックしスライドで身体を車の右に逃げ
なかったら当る角度が車に直角近くで即死コース・・、もし避けて転がった
車線に車が来たら…肉片か…

「もし」を繰り返せばいくらでも仮説が成り立ち、多くは最悪の結果。少し
寒気がした。でも怪我をしただけで自分はまだ生きている。痛みを感じて
いられるって事は「生きている」事の証でもあるわけだ。

今は思う、生きてて良かった、運が良かった、と。

---------------

運は確かに良かった。今思えば全てにおいてこの事故はラッキーだった。

骨は折れたがこんな程度の怪我で済んだ。左顔面はズダボロだが歯も
折れず、目は無事だったし、鼻も残った。何よりも自分以外の誰も怪我
しないですんだし、自分自身が悪いから誰一人恨んだり憎んだりしなくて
いい。他にも一見アンラッキーなようでラッキーな事が重なっている。

…不思議なくらいポジティブシンキング出来ていて精神的にとてもラクだ。

でもここで生き残った、という事はラッキーだった、だけじゃなく、
自分がここでまだ死んでもいい人間じゃない、って事なんじゃないか?
まだ何かか誰かがが自分を必要としていて人知を超えた何か大きな
意思で、お前はまだやる事が在る、まだ死なせてやるもんか、と
「生かされた」、・・・そんな気もするのだ。

おっとっと、これは自分は選ばれた特別な人間だ、と奢り高ぶってる
のではなく、その逆、つまり「残った者」には「残りたかったのに残れ
なかった者」に出来なかった「何か」をやらねばならない、そんな義務?
責任?を負う。・・・そういう事だと思うのだ。

平たく言えばすごろくで言えば上がり寸前で「3マス戻る」を出したような、
そんな感じかな?

---------------

かつて友を事故で亡くし、その突然の死が受け入れられず何日も泣いた。
叶わなかった彼の夢を思うと、残された家族の嘆きを見ると、友達らの
慟哭を聞くと、彼がなぜ死ななくてはいけなかったのか、どうして自分は
生きているのか、色々なことを考えた。彼は決して「死んでいい人間」
だったんじゃない!絶対に!

…恐らくは、この世に生まれて与えられた天命を遂げたので「帰った」、
つまりこの現世というステージを「上がった」んだ。そう思った、いや思う
ことにした。…そうしないとやりきれなかった。

彼の遺品として、フリースとジャケットをご家族から形見分けして頂いた。
それは今も単車以上の自分の宝物。フリースは日常で、ジャケットは
寒い日にバイクに乗るのに、今も愛用している。両方ともすっかり草臥れ、
赤いジャケットはすっかり日焼けして脱色してるけど、彼と一緒に走って
いたいからそれを着る。どんな服よりもそれは「暖かい」のだ(^^)

今回の事故の時、その彼のフリースを安物ジャンパーの下にインナーと
して着ていた。顔面と手と足は負傷したけど、そのフリースに包まれた胴、
つまり内臓は無傷だった。・・・彼が自分を守ってくれた、そんな気もした。

---------------

今回「残ってしまった」自分は、これから何をすべきなんだろう、何が出来る
だろう、布団の中で悶々と考えていた。身体の痛みと、心の葛藤でなかなか
寝付けずにいた。

眠くなるまで時間を潰そうと痛みに呻きつつ寝返りをして枕元のノートPCを
あけた。そしてMLの仲間が発した、とあるページを見たとき、その答えの
一つがわかった。あまり長く存在出来ないリンク先だと思うので、見れる
うちにぜひ見て欲しい。
 
  「ありがとう」って言いそびれたヤツいる?

自分は顔面に張ってある血とリンパ液が染み出し続け止まらずたまに
滴るガーゼが涙で薄まるほど・・・泣けた。

かつて叔父を癌で亡くしたことがある。この時も余命が告げられ、自分
なりに苦悩したことがある。十年以上前にその頃の心情を記した文章が
これ

だが、このFLASHはそんな陳腐なもんじゃない、
特に母親からアツシにあてた手紙が、涙無しには見れない。

・・・そっか、もし死んでたら、自分は沢山の「ありがとう」を言えなかった。
つまり今まで沢山の「ありがとう」を言わずに、言えずに、ここまで生きて
きたんだ。自分は死なずに済んだ者として、まずはその「ありがとう」を
伝えよう。

---------------

この「ありがとう」は普通の「ありがとう」じゃない。

例えば「愛してる」っていう言葉は、照れくさく対象もいなくて(自爆)日常で
使えないが、「ありがとう」って言葉は簡単に軽く言える。でもさっきの
FLASHに出てくるアツシと、母親が手紙で放つ「ありがとう」はそこに
込められた万感の想いにあふれている。

これを見て「これはマザコン」とかいう女がいたら、自分はそいつを
人間として軽蔑する。

そんな「ありがとう」を自分はまだ言い尽くしていない、言い足りない。
言うまで死ねない。でも自分は「単車乗り」だから、この傷が癒えたら
また走り出す。単車を降りてでも全力で守る物(例えば再び家庭とか
子供とか)が出来るまで走りつづける。

そしたら最悪、またいつどこかの路上で野たれ死ぬかわからない。
事故ってのは今回のように自分が悪くて起きる物ばかりじゃないから。
そうなる前に、ここでもそんな「ありがとう」をいくつか言っておきたい。

---------------

まずこの世にあるもの全てへ、「ありがとう」
こんな自分もその構成要素の一つです。


自分を作るために命を自分にくれた食物となった全てに、「ありがとう」
その「命の襷」、まだちゃんと受け継いでます。


自分の兄弟、友人、知人、会社の同僚、全ての仲間達へ、「ありがとう」
あなた方が自分を必要としてくれているから、自分は生きていられます。


さくさくささん、お大事にさん、そして、なおさんへ、「ありがとう」

ここは独りでいる部屋の中でぶつぶつ独り言のようにぼやきつづける
様を、誰かがたまにチラッと覗いて行くだけのBlogと思ってたけど(自爆)
そんな自分にコメントを寄せて頂き感謝です。些細なことだけど、
ここで自分は孤独じゃなかったんだ、という事がとても嬉しかった(^^)

特になおさんの励ましは、ポジティブシンキングの源泉になっていて
精神面で大きな支えです。「ありがとう」、「ありがとう」、「ありがとう」


そして事故の連絡をオレオレ詐欺だと思ったという両親へ、
「本当にありがとう」アツシ同様、あなた方のおかげで自分は生まれ、
生きて、今ここに在ります。

なのに駆けつけて最初に血まみれのガーゼに巻かれてベッドに
横たわる自分を見てどう思いましたか?。それを思うと、アツシの
母親が手紙に込めた親の子を想う気持ち、これは彼らだけの想い
じゃなくて、人として、誰もが共感出来る想いであるはず、つまり、
そんな両親に、辛い思いをさせてしまったんだな、と深く反省してます。

離婚、事故…35歳にもなった息子が親を全然安心させてあげられなくて
心配させてばっかりで、親不孝ばかりしてて、出来そこないな人間で
ごめん。

---------------

最後に元カミさんへ、自分と結婚して、短い間でも一緒にいてくれて、

「ありがとう」

上のFLASH、目を閉じて流れる歌だけを聞くと今でも切なくなるよ、
今更だけどね。もっともっと、一緒にいられる間に言っておくべきだった。
何があっても、どんなことより最初に沢山「ありがとう」を言わねば
ならなかったのに、それが先に言えなかった。今思えばそれがとても
悔やまれる。

自分はあなたにはもう逢えない人間、つまり本当に死人みたいなもんだ
この言葉は二度と伝えられない。だけど、今言いたい、「ありがとう」。
あなたに出会えたから、自分は「今の自分」になれたんだ。

・・・あなたも今の幸せを、大切にね(^^)/

 
 

|

« 事故る | トップページ | 家族 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

「あなたが自分の中の弱さをあるがままに認められたとき
自己肯定感という“強さ”が心の中ですくすくと成長していくのだ」
って言った人がいます。

こんな私は私じゃないって弱ってる自分を奮い立たせることは時に大切だけど、
本当は弱い人間なんだって自分を肯定することから始めることは、
決してネガティブなことじゃない。

現実を見つめて、受け止めて、そして乗り越えようとする、
逃げない姿勢のinoさんに私はたくさんの勇気をもらってたよ。

寂しくなったら空を見上げて。私も同じ空を見てるから。

投稿: なお | 2004.11.26 18:29

なおさん:

バカな話を言うようでごめんなさい。今はこう思ってます。
人生のこのタイミングで、この事故にあって良かったな、と。

ハタから見たら痛い想いして、身銭も切って、良い訳ないし、
沢山の人に迷惑と心配をかけておきながら不謹慎ですよね、
でも「一本のオール」を漕ぎ続けていた自分が「これから」を
生きるために必要な物を一杯学んで沢山の物を得ることが出来た、
・・・そんな気がするんです。

それにここで自分を見ていてくれたなおさんに出会えたのが
嬉しい・・・といったらさすがに迷惑ですね(^^;)

自分もなおさんに沢山の勇気と、希望と、
過去を振り切り未来を目指すきっかけを貰いました。
出来ることならディスプレィ上のフォントではなく、
手紙や、声や、握手でお礼を言いたいのですが
それも叶いませんのでここで失礼、

「ありがとう」

顔面もすっかりキズモノになっちゃったから今まで以上に
女が近寄らない男になってしまったけど(;_;)<ばき
何かにくじけそうになっても、空を見上げれば頑張れます。

投稿: ino | 2004.11.26 21:33

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「ありがとう…」 by KOKIA:

« 事故る | トップページ | 家族 »