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2005.09.05

オレは拝火教の教徒(後編)

中編からの続き

一通りメシを食って、勢いで空けた缶ビールのアルコールが少し回り
涼しい夕涼みを虫の音を聞きながら少しぼやーん、としていた時に
遠くから段々と聞こえて来たのは不等間爆発による排気干渉によって
発生する独特の脈動ある排気音だった。

これは通常は90度V型ニ気筒エンジンが発する音だ。だが自分は
それが270度クランクのパラツインの音だと分かる。えっ?何故って?
だって自分もその音を奏でる乗り物に乗っているからね。

酔っ払って少しセンチメンタルな気分になっていたので、この音は
もしや…と一瞬バカタレな事を思ったりもしたが、そんな訳がある
はずは無いのでそんな妄想を掻き消した。そしてその排気音と共に
静かなキャンプサイトに現れたのは、近未来的なデザインに特徴の
あるヤマハTDM900にOVER管を装着して乗る、このBlogにたまに
コメントを寄せてくれる我がバイク仲間のパニアーノ氏だった。

何ヶ月か前に何処かの国道の停止線で偶然並び、次の信号、その次の
信号と、停まるたびに少しずつ会話して、しばらくそのまま並走し、
そのままの状態で路上で別れて以来の、久々の再会だった(^^;)

久しぶり、お互い無事で何より(^^)

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その後、辺りが焚火の炭火が明るいオレンジ色に感じられるほど
薄暗くなって、ランタンの明かりを必要とするほどに暗くなった。
調理するために炭火のみとなっていた焚火に、少し太めの薪を追加し
少しずつ、焚火を本来の姿に戻していった。それまでは一見地味だが
猛烈な遠赤外線を放っていたそこに小さいが確実にメラメラと火炎が
戻った。

北海道ツーリングから帰っていたパニアーノ氏と、現場仕事で消耗
してきた自分とで、再び乾杯!お疲れさん!

火力を増した焚火で自分は酒のつまみとして鮭のハラミを焼きながら、
パニアーノ氏は兵式飯盒でレトルトカレーを温めながら、他愛も無い
雑談や本州に居ながらディープな北海道ツーリングのネタ、そして
人生の落とし穴の奥深さまで(謎)、焚火を囲み飲み、食い、語った。

fire

来てくれて感謝っす(^^)>パニアーノ氏

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自然と会話が弾むのも焚火の効能だけど、それが途切れたとしても
ただじっと無言で焚火を眺めたりしててもその場の雰囲気が落ち着く。
それは焚火が持つ「魔力」の一つだ。

人によっては炎を見ると興奮したりする人も居るようだが自分は逆だ。
焚火は欠かすと禁断症状が出る麻薬のようなモノだが、それはUP系
じゃなくて鎮静剤のようなDOWN系に相当するものなのだ。

炎を見つめて居ると、だんだん自分の雑念や迷いや煩悩が薄れ、
視界に炎があることを認識しながら何も考えない無我の境地に入って
頭の中をリセットする感覚を得ることが出来るのだ。その境地は恐らく
座禅や荒行、護摩行等と等しい…はず。勝手な想像なんだけどね。
その辺りが自分が焚火愛好をして「拝火教」と称する所以なのだ(^^;;)

その一度空っぽになった頭の中で新たな思考を巡らせつつ焚火を弄る。
火のついた薪を弄ると赤い火の粉が中空に舞い、眼下ではメラメラと
鮮やかな火炎が踊る。そこに息を吹き込むと生き物のように反応し
火力を増して炭火が暴れ始める。地べたに置かれた石と石で組まれた
小さく燃える竈というにはおこがましいほどちっぽけな炉の中を、ただ
ずっと眺めているだけで全然飽きが来ない。焚火って不思議だね。

そして一晩かけてご本尊様に見立てた薪を燃やし天に返すのさ<ばき

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この日は会話の合間に焚火を眺めてこんな事を考えていた。

 暗闇で見る焚火の美しさは、開列直後に原子炉から取り出して燃料棒
 プールに移されその奥底で青い光を発する、この世のものとも思えない
 チェレンコフ現象のあの神秘的な美しさに勝るとも劣らない。

 そう、動物からヒトとなる際に遠い祖先が使い始めたのと同じような
 このちっぽけな焚火は、人類の英知が結集したものの一つ、熱出力で
 実に300万馬力を超える原子炉とその本質は実は同じなんだよね。
 そういや焚火ってのは正真正銘の「原始炉」だしな(笑)

 この炎の取扱いを一歩間違えれば山火事も起きるし、自分も焼け死ぬ。
 でも、そのリスクを分かった上で上手に制御して使えば、自然を破滅
 させられる地獄の炎も単なる便利な道具に変わる。

 …世の中に存在する全ての化学物質にヒトの致死量があるように、
 世の中にあるありとあらゆるものは、方法さえ工夫すれば
 全て「人殺しの凶器」になりえる。ヒトを殺すためだけに存在する
 核兵器にはどんな言い訳も通用しないが、それ以外のものならば
 問題となるのはその使い方、そして何よりそれを使う人間の心なんだ。

 単純に危ないからと逃げたり、避けたりしていたら前には進めない。
 蛮勇なりは勇なりき、という名言もあるが、危ないからこそ、それに
 挑んで、そして征服したい、そんな勇敢な(時に無謀な)冒険者が
 この世にいたからこそ、人類はここまで発展してきた。

 確かにその中には犠牲者もいただろう。でもその犠牲者のおかげで
 今の我々は生きていられるのだ、決して無駄死にしたわけじゃない。
 嘘だ、というのなら、なぜ今我々が河豚をおいしく食えるか考えて
 みればいい。大昔、河豚を食って死ぬ人が、何を食ったから自分は
 死ぬのだ、という情報を残してくれたから、肝や卵巣が危ない、
 身の方なら食っても大丈夫、という情報を後世に残せたのだ。

 そういう犠牲を繰り返し人類はようやくここまで来た。取り返しの
 つかない失敗もしてきた、でもその失敗は決して無駄になってない。
 またそんな挑戦はもう全てやり尽くしたのではなくこれからずっと
 続いて行くのだ。今を生きる我々も、かつての冒険者と同じように
 新しい何かに挑戦し、何度でも失敗し、命をかけて何かを遂げねば…

 思えばかつての祖先がこんな小さい焚火を熾したその瞬間からそれが
 全ての人類に宿命付けられてしまっているのかもしれないな。だから
 常に自分だけは危ない事は嫌だからと挑戦せずただ逃げ回るだけでは
 ダメなんだ。そう考えれば生物学的に見れば一匹のオスとしては淘汰
 され無駄に生きるだけとなった今の自分が高線量高汚染エリアで働き
 余計な給料を貰ってる事にも何かしらの意味があるのかもな。

おっと、だいぶ悪酔いして思考がネガティブ側に回り始めちまった(苦笑)

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せっかく焚火の魔力によりアタマの中をカラッポにしたのに、多くは
飲めぬ酒を缶ビール2本も飲み干したので思考も暴走気味になってきた。
その後の会話もろれつがうまく回らなくなって何よりも眠くなってきた。
パニアーノ氏も同じだったらしく、23時頃には「焚火を囲む会」はお開きに。

若干残った木炭を全て炉にくべて、朝まで炭火が灰の中で残るように
した。そうしておけば、夜中に雨が降らない限り、朝も焚火を熾し
その恩恵にあやかれるのだ。

ランタンを消し、それぞれが自分のテントにゴソゴソと入った。
自分は寝袋にもぐりみエアマットの上に横になると、あっという間に
寝入ってしまった。ぐぅぐぅぐぅ。

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翌朝はテントに朝日が差して、日光で加熱されてサウナになる寸前に
その暑さを察知し目が覚めた。寝袋から出て、テント内の荷物をある程度
まとめてから外に出た。朝日は既にその火力を如何なく発揮していたが、
大気の温度はさほど高くなく、ソヨソヨとそよぐ風は涼しかった。

すると隣のテントがごそごそ動き、パニアーノ氏が羽化した。

panian

いやー命ある生き物ってそれ自体が神秘でなんて凄いん<ばき
#うそっす

シュラフを乾かし、焚火の様子を見に行くと、真っ白い灰の中にまだ
炭火が沢山生き残っていた。ここに薪をくべれば、あっという間に焚火は
復活可能だし、そのまま金網を載せればトーストが焼けるくらいの火力
がある。だが夜遅くまでガツガツ飲み食いしてたので朝飯はパスだな。
よってキャンプ撤収のために、焚火を始末する事にした。

たっぷりの水をかけて完全に火を消した。風除けにつかっていた石は
水が瞬時に気化するほど加熱されてるので素手で触ってはならない。
水蒸気の断末魔が絶えるまで徹底的に何度でも水を注ぎ冷却する。
そしてスコップで穴を掘り、灰とその下の焼けた土を埋めて完全に
焚火の痕跡を消した。

さあ、自分が生きるべき現実に帰ろう(^^)
    ↑
  思うに毎回この決心をするために自分はキャンプをするのかもな

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てきぱきとテントと荷物を撤収し、パッキングし、全てをバイクにくくる。
パニアーノ氏とはそこで別れ、単独で走り始めた。目指すは「我が家」。
途中、あちこちと寄り道しながら久々のバイクツーリングを満喫して帰った。

いやー、久々の単車、久々の焚火、久々のキャンプ、楽しかったゼ(^◇^)♪
また近いうちにやろうっと
 
 

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コメント

焚き火たのしいですよねぇ~(^^)
んでも最近着火剤の乱用か
必要以上にでかいファイヤーを
あげる方々が・・・(T-T)
どんどんサイト以外の焚き火が禁止になるよぉぉぉ(T-T)
私も先日某海辺にてゲリラキャンプをしてまいりました
おかげでinoさんとこ見れませんでしたけど(汗
(一週間車で野宿三昧)
いやー焚き火
楽しいよなぁ~(フフフ

投稿: ねこまんま書記長 | 2005.09.06 12:27

おつかれ様でした。
早いものであれから一週間がたちましたね(^^;;

まるで北の国の旅の延長のようなさっかっくしまくりました。

解散後すぐそばに上九一色村役場の裏に温泉、上九の湯があったので
朝蒸したキャンプの汗流しにふらりと寄り道、

休憩所では地元のおじさんやおばさんらがくつろぐ中で
自分ものーんびり

地元の人の作ったできたてのすいとん汁やよもぎまんじゅうを食べて
朝飯抜きのお昼として腹を満たしてまいました(^o^)

バイクなツーリングってほんといいですねぇ~

広大な富士周辺の緑深い山奥を走ってると
このまま北の大地に抜けられるのかと期待しましたが、

残念ながら、だんだん暑く狭苦しい市街地に突入となり、そのまま強制帰宅、
終了となりました(笑)

以上前編終了(^^;;;;

投稿: ぱにあーにゃ | 2005.09.06 23:45

中編(えっ!)

焚き火の炎、

私は思うのですが、
人は炎に自分の命、心の鏡を
想像するのではないのでしょうか。

それは時に熱く盛んに生きる人間の、熱く燃え盛る魂の炎、
ときにはしたたかに生きる人間のはかない
人生のともし火ともなり得るのでは・・・

人は焚き火の炎を見たときに自分の命の炎を
知らず知らずに重ね合わせるのかもしれません。

自分は燃えているのか、それとも燃え尽きてしまったのか・・・

炭エネルギーでかんかんと燃え盛る炎、燃え尽きるまで燃える炎・・・

火は人の命、燃え盛る炎は人の魂、時に人生のともし火ともなり、
見る人の心を写し出す
さらに見る者の心を洗浄

あの日、静かな湖畔の自然の暗闇の中で、
inoさんが盛んに燃やす焚き火の炎を見ていたら、
私もいろんなことが走馬灯のよう自分の心もあぶりだされたようでした。

酒はもといこの絶大な焚き火炎のコラボレーションで、
想定外にも思わずあらぬことをはいてしまいました(自爆)

実は誰にも知れずに(できるだけ)墓場行く予定だったのですが・・・、残念(TT)<ばき

それはさておき、
火とは不思議なものです。

そして後編につづく<ばきき

投稿: ぱにあーにゃ | 2005.09.07 01:08

後編(がーん)

野営の炎はツーリングの、はまたた人生の
長い旅のひと時の落ち着いた時の癒しの炎なのでしょうか。

inoさんありがとうございました。

inoさんとのキャンプは某極東のようでもありながらも、
また一味違う、洗練され熟達されたライダーの
なにか素晴らしいキャンパーな姿を垣間見た気がします。

そういえば私が北の国に旅に出たのも、
昔信州の無料キャンプ場で出会ったオフロードライダーとの出会いと
その話がきっかけでした。

まだ知らぬツーリングという旅に憧れて
新たな旅を目指した時の清々しくも希望に満ち溢れたようなものが
今回一瞬よみがえりました。

学生というぬるま湯を出て、
社会という熱湯のような右も左もわからぬ世界を

果てしなく広大な謎の大地、
北海道を初めて旅するライダーのような調子で
自由きままにさまよっていたのでしたが、

初心者にありがちな北の厳しい大自然を舐めたせいでしょうか、
晴れる日は少なくほとんどが寒々とした雲の下、
冷たいも雨りしきり、その寒さに震えだしてしまった。

どこへ行くにも曇り空か雨降りで進むべき道を失い、
地図もコンパスも十分な食料も持ってこなくて、
むなしくも時は流れ、ただ雨宿りのごとく立ち尽くすだけ・・・

若さというバイクのような勢いに身をまかせ突き進んだものの
いつしか道は藪の中となり、
とうとう迷子になりガス欠したかのごとく。

いずれにしても、旅の教訓なのでしょう。
甘受してライダーば成長しなくてはいけません。
なんとかして新たな旅へ向けて旅立ちたいものです。

雨が降っても、旅を続けていれば
いつかは必ず少しでも晴れますからね。ライダーは走り続ける・・・

そしたらカッパを乾かして、ガンガンと行きたいと思います。

最近の観測史上まれに見る大雨自然災害のごとく
大きな爪あとが復興の際に残り
大変な苦労が伴うこと間違いなしですね

私はライダーなので道がガタガタしても
なんとか走って旅を続けようと思います(爆)。

もはや何を言っているのか
意味不明です、すみません(TT;;;

ともあれ、inoさんのように
多くの素晴らしきライダーのキャンプを見て
私も自分の旅の境地をつかみたいです。

大長編3部作に対応した(?)ものの,
ダメレスで申し訳ありませんm(..)m

人は火となり、炎となり、ライダーもまた(?)

さて、
次回はペテランセルな方が
近場の道志のへんで野営の会を行いたいように
コメントしてましたがいかがでしょうか?

どうも、失礼しました(^^;;;;

投稿: ぱにあーにゃ | 2005.09.07 01:59

自宅のPCが怪しいメールのURLをうっかり触れたら
妙なアダルトサイトに飛ばされポップアップ開きまくり
&びっちりウィルスとスパイウェアを仕込まれてしまい
対策ソフトくらいでは復旧できずに大変な状態に(TT)

あーあ、こりゃクリーンインストールし直さないとアウトだ
ちっくしょう、何か面倒だな、そろそろ新しいPC買うか<ばき

------------

ねこまんま書記長さん:

おやおやお、書記長殿も同好の志でしたか(^^ゞ
科学技術万能な今の世の中だからこそ人間には
焚火は必要ですよね(笑)


あしたぱにあーなさん:

Hasta Maniana! Mi amigo!

ふとその昔、諸般の事情で西語を必死で独学で
学んだ事を思い出しましたよ(笑)

今回は参加頂きありがとうございます(^^ゞ
最近はなかなかああやって人と語る機会がなくて
仕事以外では久々に沢山しゃべった気がします。

焚火には明かりや暖かさだけでなく、今の時代ですら
解明出来ない沢山の魔力が宿っています。あの雰囲気で
人と語るといろいろ余計な事をしゃべってしまうのも
そのひとつです<ばき
そうそう、例の件はご安心を、他言はしませんよん(^^)

かく言う自分は焚火を前にしなくても、ここでダラダラと
わざわざ表に出さなくてもいいことをタレ流してますけど(^^;)

我々はバイク乗りでありますけど、その前に「単車乗り」です。
何があろうと、走る事を止めずに旅を続けましょう。
ありとあらゆるトラブルや不可抗力な土砂降りや
思うように進めない荒れ果てた曲がりくねった道、
または長く長く単調で退屈な風景の続く直線・・・

そんな過酷な現状の先には、そこで苦労したり
悩んだりしながらここまでずっと走り続けていた事を
きっと誇りに思えるほどに、すばらしい世界が開けている!
・・・はずです、自分のように事故らなければ(^^;)<ばき

あっちの世界はスキップしてるので現状把握してませんが
そうですね、9月最終土日あたりでもういっちょやりましょう(^^)/
 

投稿: ino | 2005.09.08 00:02

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