旅2007・7日目
「船長の家」で朝を迎えた。寝るまでザンザン降っていた雨は上がり、
薄曇りとなっていた。朝の天気予報では今日から数日間は天候が回復
するらしい、との事だった。よし、やっと恵まれた日々を過ごせるな。
サロマ湖畔からなら、今回の旅のノルマにしてタスクである最北端行き
も頑張れば一日で到達出来る距離だ。いいライダーハウスも多いから
今夜はそこにでも泊まって、明後日は最終目的地の朱鞠内湖の湖畔の
キャンプ場にいけばあの6年前のように満天の星空も見えるだろう。
そこが前回から続くこの旅の終点、そしてこれから始まる新しい旅の
始点になる。・・・ちょっとだけ、寂しいけどね(謎)
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ありとあらゆるものの味がカニに感じられてしまうような強烈な夕食を
食って寝たが、それでも不思議なもので朝になると腹が少しだけ減って
いて、朝飯が食える状況になっていた。朝食のアナウンスを聞いて動く。
夕飯も多かったが、朝飯もとても朝飯とは思えない質と量があった。
朝から刺身だ、揚げ物だ、焼き魚だ、と、一般の旅館でこれが夕食に
出たら「やー、今夜は豪勢だねぇ」と十分思えるだけの朝飯だった。
だが朝にガッツリ食うタイプの自分の敵ではないのだ(^^)。ご飯を
山盛り2杯食って余裕で完食(^◇^)。なお同室のお二方はかなりの
量を残していた(^^;)
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部屋に戻り準備をしていた時、携帯にメールが入っているのに気付いた。
開いてみるとそれは今の彼女(?)がピンチになっている事を告げ、自分に
助けを求めるメールだった。出来る事なら、と足されてはいたが帰って
来て欲しい、という事が明記されていた。助けようにも、帰ろうにも、
自分は北海道のオホーツク沿いのサロマ湖の辺にいるのだ。そう簡単に
は帰れない。それに自分には今回の旅で果たさねばならない、ケジメを
付けねばならない元カミさんとの約束がある。あと2日あればこの6年
の間果たせなかったそれが叶うのだ。
サラリーマン人生最後の夏休みはあと9日残っている。それだけあれば
北海道の旅を完全に満喫して完了することも可能だろう。そうすれば
次のステップに行く事も出来る。それに遠方にいる自分が行かなくても
この旅を完了してから駆けつけても、十分間に合うかもしれない。
また一緒に北海道に来よう、今度は行けなかった所にまた一緒に行こう、
と6年前の旅の最後に元カミさんと約束した最北端の地は、もう道路の
標識に出てくるような、手の届くすぐの場所にあるのだ。行くしかない。
・・・だが、今の自分に大切なのは、果たしてどっちなんだ?
過去の想いと約束を完了させてケジメを付け、自己満足する事なのか?
それとも今の自分を必要として助けを求めている彼女の要望に答える
事なのか?。同じ過ちを俺は繰り返してはいけない。人生最愛の元カミ
さんを結果不幸にした過去の経験を生かさず、また今の彼女を同じめに
あわせるのか?
ふと2日前の相生の記憶が甦る。そうさ、答えはそこにあったんだ
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・・・そうだよね、元カミさん(^^)。今回の旅はここで中断するけど、
それを許して欲しい。決して頓挫した訳じゃない、断念した訳でも無い。
あなた交わしたあの約束は次の機会を設けてきっと果たす。それまで
しばらくTW用のウェストバッグの中で待っていてくれ。
今回が最後の旅なんだぜ、と言い聞かせて老体にムチ打って走らせた
TWも、帰ったらもう少し延命させてやろう。この旅を再開し、そして
終えるその日まで、もう少し頑張ってくれ、相棒よ。
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自分の旅のモットーは、状況に応じた臨機応変だ。たった今、昨日まで
とは状況が変わった。方針を決めたのなら即断即決、今の彼女に返信を
打った。
「可能な限り、最短で帰る」
とはいっても、フェリー乗り場まで丸二日、フェリーに乗って帰り着く
までにさらに1日かかるのだ。しかもウルトラハイシーズンの今に予約
無しで飛び込みでフェリーに乗れる保証も全く無いのだが(--;)。
とりあえず旅の途中でこまめに連絡を取り合っていた士幌に住む友人に
そちらに伺うのでヨロシクと連絡を入れた。よし、今日はそちらに行く。
準備万端、さぁ行くか!、今日は使いませんように、と願いを込めつつ
カッパを畳んで定位置に括り、いざ出発!、カニ堪能しましたぁ!
しばらく走ると、道の脇にとてつもない量のホタテの貝殻が山積みに
なっている場所などがあった。これだけの貝を人間が食ったのか(^^;)
もうしばらく走ると前方に稚内へ向かう方向を示す標識が現れた。だが
今回はこの道を進むわけにはいかない。だけどいつか必ずまたそこに
辿り着く、と心の中で誓い、進路を西に取り、走り出した。
その途中でこんな悲しいモノにも遭遇してしまった。以前北海道を
走った時も同じような悲劇を何度も目撃しているけど、今回も…(;_;)
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国道238号から南西に伸びる道道103号に乗り走る。天気は薄曇りだけど
雨さえ降ってなければもう上々!、そのまま若佐に入り一旦国道333号に
乗り、栄まで走って再び道道103号に乗って南下し、留辺蘂を目指した。
留辺蘂は2日前に通った所だっけ。極力同じ道は走りたくなかったので
約1kmだけ同じ国道39号を走ったけどすぐ足寄方向に行く国道292号で
南下コースを取った。
あ〜〜〜〜〜〜〜っ、最高に気持ちぃ〜〜〜〜〜〜〜いっ!!
握るハンドルと座るシート、そしてステップやニーグリップしてる膝から
自分の神経が車体の隅々まで伸びていって、車体の挙動や調子の全てや、
路面を掴むタイヤの感触までが、自分の身体の一部として伝わっている
ような錯覚に襲われる。
20年モノの200ccのバイクとは思えないほど快調にTWは走る。人が生きる
ために必要な最小限の道具を背負って旅するのに、コイツほどマッチする
バイクは無いな。元々ベタ惚れだけど、一緒に旅するたびに、コイツに
惚れてゆくよ。新しいバイクは沢山出回っているけど、TDMやXTをはじめ
色々なバイクを持っているけど、それでもコイツ以上に自分にシンクロ
する乗り物は無いのだ。
バイクとの関係を人間のそれと例えるのはなんだけど古女房っていうのは
多分こういう感じなんだと思う。畳と女房は新しい方がいい、なんて言う
けど、本当にマッチする相手なら、死ぬまで一緒にいても飽きる
事なんてないんだと思う。
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国道242号の脇には線路が走っている。もうレールが赤錆に覆われている
のでそれが廃線跡だとすぐに判った。ちょっと道を外れて、その線路の上
を走ってみた。
かつてここには人が汗を流して軌道を敷設し、そしてその上を走る列車に
歓声を上げたはず。でもそれは今では役割を終えて、土に還ろうとしてる。
そんな事を想いながら、今はバスがその役割を果たす国道に戻り、南西に
向けて走り続けた。
下塩幌と言うところで道道468号に右折して通商「ミルクロード」なる道
を進む。たしかに酪農地域特有の景色が広がり綺麗なのだが、山に向かい
進む道でもあるので、だんだん雲が下がってきて、空が暗くなり、ついに
雨がポツポツ降り始めた。
今日はカッパを着なくてもいけるか?、と思っていただけに残念(TT)
でも状況に応じて対応するのが旅であり人生だから、それを躊躇してる
暇はない、さっさとカッパを着込んでそのまま上士幌を目指した。
そしたら段々雨が止んできた。なんだよ!もう!
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上士幌ではちょうど気球のイベント?が行われていたのでちょっと寄り
道してそれを覗いてみた。熱気球が体験乗船をやってたので乗ってみた
かったが、あまりに沢山の人が行列をなしていたので断念。
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そこから士幌に住む友人に電話で連絡をして、そちらに向かった。
この友人とは、このBlogのコメントにたまに出没する「ガミ」氏だ。
彼とはかれこれ数年来のつきあいがある。同じ年齢と言うこともあるが
人が生きるために大切なモノはなにか、という本質面でお互いの考えが
近い事もあり、細かい所は微妙にずれているが結構気が合うのだ。彼が
脱サラして渡道後、住まいを訪ねた事が無かったので一度訪ねてみた。
彼の家に着いたらその前にはいかにも自分の友人らしい怪しい物体が(^^;)
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今夜は彼が知人から借りてくれた某所にある山小屋で、彼の育てた野菜
主体の飯を食らいながら二人で中年独身男の辛い現状と、今後の悲哀に
満ちた将来、そしてお互いの人生についてシミジミと長く語りあった。
・・・シクシクシクシク(;_;)<ばき
#うそっす
この山小屋はいいなぁ、自分も将来はこういう隠れ家が欲しいもんだ。
北海道に作って、毎年行くのもいいが維持管理がちょっと無理か(^^;;)
会食後、彼の車でさっき寄った上士幌航空公園に行き、20機以上のカラ
フルな熱気球が一堂に揃い、カウントダウンと共に一斉にバーナーを
焚いてまるで巨大なボンボリか提灯のように夜に浮かび上がる様を眺め、
その後で士幌町の中央から東に伸びる道道134号の先にあるプラザ緑風
なる所の植物性モール温泉に漬かった。
20年モノのスポンジがヘタり長時間乗っていると尻が痛くなるTWのシート
で食らった尾てい骨周りの痛みを湯で癒した。今日で中断したこの旅を
いつか再開するその時までに必ず、いや帰ったらすぐにでもこのシートは
改善してやるぜ(^^;;;)
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そう、不思議な事に、ケジメを完全に果たさずに中断した事による
挫折感は無く、逆にまた自分には次があるのだ、また今回取り戻した
かつてのあの気持ちを持って自分は再び北海道を走りに来れるのだ、
というポジティブな思考の方が強くある。
現実としてはそんな長期の休みが今後取れる可能性は低いのだが、でも
こうやって旅していると「ダメかもしれないけどやってみなきゃ判らない」
というシチュエーションに何度も遭遇し、往々にして実際やってみたら
どうにかなっちゃう、という実例を沢山感じる事が多いのだ。旅とは生活
であり、そして人生だから、つまり人生もそうなのだ。
ドン詰まりだから何をしても無駄なんて事はなくきっと頑張ればどうにか
なる。頑張らなければ絶対に成す事はないし、頑張った結果ダメでもその
頑張れた事が、きっと次に行くための知識と経験として生きるのだ。
さぁ明日はフェリーを飛び込みで取れるかどうか・・・盆休みド真ん中
だからかなり難しいだろうけど、これもやってみなくちゃ判らない、
やってみて、もしもダメならその時また次を考えるとしよう。
色々と訳ありの中年男二人で過ごす森の山小屋の夜はこうやって老けて、
いやいや縁起でもない誤変換だ、あらためて、更けていった・・・
本日の走行距離 213km
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