旅2012・プロローグその2
以前の旅は2007年、ちょうど5年前だ。その頃、自分のそばには
彼女がいた。色々な事を抱えて、とても苦しんでいる女性だった。
だから自分がどうにかして助けられるのなら助けてあげたかった。
色々な危機から避難するために、ご両親の了解を得て自宅に呼び、
短い間だったけど一緒に暮らした。色々な事を抱えながらだった
から、100%の幸せではなかったけど、それでもその生活の端々に
しみじみとした幸せを自分も感じる事が出来た(^^)
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ちょうどその頃、仕事が研究開発から現場回りに変わる話があり、
色々な人生の変曲点が、ちょうどそのタイミングに集まっていた。
だから元カミさんの想いにケジメをつけるため、バイクで旅する
自分を、その彼女との生活を優先するために封印する覚悟をして、
今までの集大成として「サラリーマン最後の夏休み」と称し今回と
同じように長い連休を取って、旅に出た。
その目的は、その昔、元カミさんと一緒に北海道ツーリングした
後で交わした本当に些細な一言の約束、
『次に来る時は、きっと最北端に行こうね!』
それ以前に一人では何度も宗谷に行っているけど二人で旅を
した時には諸般の事情でそこまで行けなかった。だからそういう
約束をした。きっと元カミさんはそんな事を覚えていないだろう。
それを果たしたかった。とっくに離婚して他人になってしまった
身ではあるが、手元に一枚だけ残した元カミさんの写真と共に、
あの時とまったく同じバイク、装備で、約束通り最北端に到達し、
そして、満天の星の空の下で二人でキャンプをしたあの場所で、
焚火を起こして、その写真と共に自分の想いを火葬するためだ。
その目的を達成する直前、その旅は途中で彼女からのSOSにより
中断を余儀なくされた。でもそれでも、自分は納得していた。
こういう終わり方もまた元カミさんを不幸にした自分にはとても
ふさわしいのかな、元カミさんを幸せにしてやれなかった分を
今の彼女に尽くしてあげよう、そう思って一目散に飛んで帰った。
彼女は予想以上に早く帰りついた自分を、とても喜んでくれた。
今回の旅の目的を知り、少しあきれて笑っていた。だから自分も
これでもうケジメがついた事にして終わりにしよう、そう思った。
そしてこのまま彼女と再婚するのかな、とも。
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だけど、そのわずか1週間後に、彼女は一緒の住む自分の家で
自殺を試みた。後で聞いたが、明確な理由があった訳ではどうも
無い様で、何かが弾けたか、何かが地雷を炸裂させた発作的な
ものだったらしい。数週間後からしばらく現場に出る事で再び
一緒にいられなくなる事がその連鎖反応の始まりだったらしい。
発見が早く、命に別状はなかった。自分にある僅かな救命救急の
知識を使い救急車が到着する前に出来ることは全てやり、自宅に
救急車とレンジャー隊員が乗った消防ポンプ車までやってきて、
狭いこの家に救急隊員とレンジャーが色々な機材を持ち込み、
応急手当をした後に、彼女を救急車に運び込んだ。
自分もご両親にすぐ連絡をして救急車に乗り込み病院に向かう。
病院で落ち合った母親に頭を下げて事情を説明した。彼女は
その後、回復したものの精神的不安定からそのまま長期入院。
それまでの、ほのぼのとした彼女との暮らしは、これで終った。
その後も現場仕事に従事しながらどうにかサポートを続けたが、
長期出張を余儀なくされる仕事の身の上ではその後も発作的に
自死を試みる彼女を一人で家に残す事になるため、最終的に
自分は身を引く事になった。
でも元カミさんとの別れで生じた「ああしておけばよかった」
という後悔は一つも無い。自分にやれる事は、全てやりきった。
たぶんこの件に関しては世界一と胸を張れるくらい頑張ったよ。
これだけ頑張ってそれでもダメなら、それは愚直に諦めるしか
ない、そんなギリギリまで頑張ってみた結果だからね。
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だから、今回は中断した前回の旅の再開と、そして幸せにして
あげる事が出来なかった当時の彼女との決別も含めた、色々な
ケジメを自分なりに付けに行く。いい年した中年男が実に女々
しいなぁ、と我ながら思うけど、目的はそれだけじゃない。
愛機TWももう古い。出発前にやれる限りは尽くしたが、今回の
旅を完遂出来るかどうかは、やってみなければ判らない。
それに乗る自分ももう40半ばと若くない。気力はあっても体力が
昔とは違う。それに社会における立ち位置が、若い頃とやっぱり
違ってきている。だから小排気量のバイクで気ままな長距離&
野宿旅をするのは、きっとこれが最後になると思う。
これからを生きるために、今まで(背負わなくてもいいのに)
背負い込んで生きてきた色々なものを吹っ切って肩から下ろし、
自分自身でそれに納得した上で、新たなる次に進みたい。
自分の分身と思う愛機TWとの別れもそう遠くないだろうし。
…今回の旅は、中年男の夢の遠足でありながら、そういう
今までの人生に踏ん切りをつける旅であったりもするのだ。
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…さて、準備もほぼ終わり、明日から旅に出発します。
道中はリアルタイムでレポートするのではなく、旅の途中で書き
溜めたものや画像を、後日まとめてUPする形となる予定です。
赤裸々な中年男の一人旅、果たして未来はどっちだ(^◇^)?<ばき
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コメント
もう出発されていると思いますが、
行ってらっしゃい! よい旅を!
投稿: 剣片喰 | 2012.07.22 20:50
剣片喰さん:
現在フェリーは函館恵山沖を順調に航行中です(^^ゞ
上陸したら五年前に最後に行った支笏湖に行く所からリスタートです。
今日は午後だけなので、あまり欲張らずその近所をウロウロして
この近所で適当に泊まるところを探します。
早く船が着かないかなぁ♪
投稿: ino | 2012.07.23 11:31
おおっ! 無事出発なさいましたか?おめでとうございます。
私は毎年、夏、北海道へはバイクで行くことにこだわってましたが
昨年は断念、航空&チャリで代替しました。
今年はもう行けるかどうかわからない状況でしたが
inoさんのリアル出発を見て、行きたくなりました。
宗谷岬を目指すようですね、日程があれば稚内のライダーハウス
「みどり湯」に行ってみてはどうでしょうか?
旅人同志の出会いと管理人のおばさんとで楽しい一夜がすごせますよ
一人旅の夜は静かに過ごしたいものですが、
このRH(ライダーハウス)はいろんなライダー、バイクがあつまり
談義もたのしいです。
某バルブなクラブのメンバーともここで何度も偶然出会ってます(^^;;
ああ、なんだか夏になると、ライダーの血が騒ぐのか
わたしもいますぐ、そこへ飛んでいきたくなりました(笑)
道中お気をつけて、よき旅を~(^^)/~
投稿: ぱにあけーす男 | 2012.07.25 08:49
追記です
RHみどり湯は稚内のあちこちに置いてある公式パンフレットにも連絡先載っています。
ロンリープラネット(世界版?の地球の歩き方みたいな英語のペーパーバック)にものってます。
投稿: ぱにあ | 2012.07.25 08:55
ぱにあさん:
いつもお世話になってます(^^ゞ
いまは士幌の道の駅の温泉を出た所です(^^;)
昨夜は大正カニの家、その前はライダーハウスちとせ、と
メジャーなRH利用は今回の旅のテーマの一つです。
みどり湯もターゲット入っています。ありがとうございます(^^ゞ
投稿: ino | 2012.07.25 22:16