SX、不死鳥のごとく復活
自分の友人が夜の繁華街の右折タクシーと直進バイクの
典型的な右直事故で無くなったのは平成10年の秋だった。
当時タクシーと接触したバイクは、色々な縁があって、
現在自分の手元にあるこのスズキSX200R。これは
それの同型車種、ではなく友人が所有し、運転し、
一時停止をせず前方確認をせず右折して友人を
死なせた憎きタクシーと事故った車両そのものだ。
このSX200Rを、事故のダメージから復活させ、再始動し、
彼が通り抜けられなかったあの交差点を無事に通過して
何事もなく自宅に戻る、ただそれだけを成し遂げたくて、
埃まみれ錆まみれで放置されていたこのSXをウチに
引き取ったのは2008年の夏。
どうにか復活させて、ナンバーを取得したその当日に
自分が友人と同じシチュエーションで事故ってしまい、
SXは再び沈黙した。
ここから事故のダメージを少しずつ少しずつ直して行き、
二度目の復活を遂げたのは2010年の秋、でもSXは
事故現場に到達する前に、それまで何一つ問題なく
走っていたのに突然エンジンが止まり、そこで完全に
沈黙してしまった。
エンジンがかからない原因を突き止めようと色々な
手をつくして、やってみたが、どうしても再始動しない。
これはもしかすると亡くなった友人の意思なのか?、
そう思わずにはいられないようなエンジンストップ、
そしてそれ以降の沈黙だった。
それ以降、半年に一回くらいのペースで再始動を
試みたがまったく火が入らないまま時だけが流れた。
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動かないバイクだけど、ナンバーは生かしたままで
毎年税金を払い続けた。このまま廃車にするのは
簡単だけど、絶対にもう一度走らせたかった。
圧縮はある、カムもバルブも正常、キャブは何度も
OHしたし、インナーパーツも新品に変えた。それでも
かからない。プラグも変えた、キャップもケーブルも
コイルも交換し、CDIも中古をいくつも入手しては
試したが、再始動することはなかった。
なので、電気技術者であるバイク仲間の手を借りて
SXの電装系を全部再チェックしてみた。
セルが付いていればもう少し楽なのだけれど、
キック始動なので、複数人居ないとこういうチェック
をするのは難しい。でも志を同じとする仲間たちが
一致協力して、何が悪いのかを調べてゆく。
・・・基本的には悪いところは無かった。だけれど
オシロスコープをつないでコイルの起電力を調べた
時に、ピックアップコイルの信号が他のコイルよりも
かなり弱かった。導通はあるし、抵抗値も基準値
以内だからコイルが壊れてる訳じゃない。
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となると、おそらくはピックアップコイルを新品に
換えれば直るだろう、と考えた。起電して、導通
があってもCDIに対して発火信号を与えられない
不良品ならば、交換すれば直ると考えたのだ。
スズキに部品を注文したら、こんなモノが届いた。
ヤマハ(のTW200)は簡単に交換出来る構造
だったけど、SXのそれはエンジンからユニットを
取り出して半田コテで既存コイルを取り除き、
半田付けして新品を付けるのだという。面倒な
仕組みだ。でもSXだとそういうことが出来るけど
後継機種のジェベル200では高価なユニット全体を
新品交換しないといけないらしい。SXで良かった。
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さあ、バラそう。
SXのジェネレーター&ローターはエンジンオイルに
漬かっているのでクランクケースカバーを外すと
エンジンオイルを失ってしまう。まぁ仕方が無いな。
さて、ピックアップコイルは…あああっ!
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ピックアップコイルを固定するネジがこの通り
緩んでいた。そしてコイル自体がローターから
そっぽを向くような位置になっている!
エンジンが止まるまで、何の異常もなく走って
いたのに、ピックアップコイルを止めるネジが緩み
何らかの事情でコイルがそっぽを向いたため
点火タイミングを知らせるコイル信号がCDIに
入らず(厳密には磁石がコイルから離れたため
起電力が弱すぎて信号にならなかった)
理由はわからないが、ピックアップコイルの
支持プレートがこんな形状に変形している。
国道を元気に走っていた車体が突然止まった
理由がこれ?、一体どういう事象なんだろう?
なんとなく、亡くなった友人がこれに乗る自分を
何らかの事情で止めたくて、こういう現象を
起こして自分を救ってくれたんじゃないかな、
と思ってしまった。
・・・ありがとう。
そう念じながら、曲がったプレートをまっすぐに
直して、固定ネジをしっかりと締め、ローターと
コイルの位置関係を微調整しながら取り付けた。
ケースカバーのパッキンを新しいものに換えて
カバーを取り付け、新しいオイルを足した。
これでもう何も問題は無いはず。エンジンよ
かかれ!、目を覚ませ!SX200R!
チョークノブを引き、キックペダルを踏んで、
デコンプレバーを引いてピストンの位置を
調整してから、何年もの想いを込めてキック
ペダルを踏みおろした。
「バッ!ババババババババババ!」
長い沈黙を守っていたSXは、たった一蹴りで
規則正しいパルスを刻みながら目を覚ました。
チョークを戻し、正規のアイドリングも安定、
そこからスロットルをひねるとレスポンス良く
エンジンが拭けあがる。気になるところは殆ど
新品になってるもんだから、絶好調でやんの。
…おかえり、SX。あの交差点を今年こそ走ろう。
長い放置の果てに真っ赤に錆びてしまってた
エキパイとマフラーを外して錆を落として耐熱
塗装を吹いた。たったこれだけでだいぶ見栄え
が良くなったぜ(^^)
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