見知らぬ大先輩逝く
大昔やっていて、社会人になって少しした頃に一旦止めて、でも新型コロナで再開した無線趣味、実は自分をこっちに引き戻してくれた人が居た。仮にその人をIKTさんとする。その人が少し前に亡くなっていた事が判ったのでちょっとだけ書く。
緊急事態宣言をうけて慣れない在宅勤務を始め、休日でもどこにも行けず、家に籠る時間が増えたので部屋を片付けてた時に、昔やってた無線趣味のトランシーバーが出てきたのがその趣味を再開する発端だった。とはいえ、ただ出てきただけならそこ止まりだった。だけど電源に繋いでアンテナを伸ばして受信したら、結構多くの人がまだ無線をやってて、色々な交信が聞こえてきた。その中にIKTさんはいた。
交信内容を聞くと相当の高齢らしく80代で、足腰が相当弱ってるらしい。それでも無線機から聞こえてくる声は意外としっかりとしてて、会話も老人なりではあったが問題なく、毎日元気に無線交信を楽しんでる様子が聞けた。ああ楽しそうに無線やる人がいるなぁ、と思って、なんとなく、この人としゃべってみたくなった。ほかにも何人も「この人と交信して会話してみたい」と思う声が増えてきたのもあって、じゃあまたやってみるか、と思い立ったのが無線趣味再会のきっかけだった。
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総務省から無線局の免許が下りて、合法的に電波を送信できるようになったその日、さっそく自分はIKTさんに声をかけ交信してみた。かれこれ四半世紀ぶりの無線交信だったけど、ああこういう世界だったなぁ、と感じながらIKTさんと楽しく交信させてもらった。それ以降強力に入感するIKTさんはおなじみの交信相手となり、しょっちゅうご挨拶やら出先からとか、アンテナ調整した結果の確認で、とか、色々な機会で何度も交信して会話するようになった。
とはいっても無線趣味の世界は電波を介した会話でのみのコミュニケーションであるため、一度も会わなかった。どういう人相でどういう背格好で、といったことは全く分からないでの音声会話だけの付き合いだ。でもそれはそれでその人となりが判り、コミュニケーションが成立する。そういう世界の中で自分はIKTさんと会話して過ごした。
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あるときから無線で声を聴かなくなった。たまに不調になって入院して1~2週間電波を出してない、という事はあったので今回もそういう感じなんだろう、と思ってたけど、1カ月たち、2カ月たち、全く受信機から気配が消えた。高齢で不調気味ということで、もしや…と思ったが確かめようがない。どうかご無事で、と思いながら過ごしたが、先日その音信普通になってしばらくしてから亡くなっていた、という事が風の便りで伝わってきた。
…ああ、そうか…やっぱりなぁ、悪い予感だったけど、当たってしまった。結局一度も直接お会いする事はなかったので、自分が記憶しているのは声だけ。おせわになりました、ありがとうございました。一度お会いしたかったです、それが残念。
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無線趣味の世界はワカモノがやってこない世界なので毎年平均年齢が上がり、そして数が減っている。自分の年代で若い方で、中心となる世代は60~70歳くらいだと思う。すごく面白くて奥が深いのでドハマりすれば死ぬまで楽しめる趣味だと思う。でも多分今の中心世代が老いて倒れてゆくようになると、もう先が無いとも思う。
自分の主に関わる世界であるバイクも、一時ワカモノから愛想つかされて毎年平均年齢が1歳上がるという状態になってた。でもここ数年でワカモノが小さいバイクや中型バイクに乗ってくれるようになって、ライダー人口がふえて、新車が売れるようになり。市場もひろがり、息を吹き返した感がある。
片や衰退の一途をたどる無線、片やそのフチから蘇ってきたバイク。バイクと同じようにきっかけがあれば無線もまだまだ回復できると思う。その奥の深さや感じられる楽しさは両者とも質も量はちがいこそすれ、決してお互い引けを取らないくらいの楽しいモノだと思う。そんな世界に戻った自分が思うのは、自分がこれからこの世界に興味を持って覗こうとする誰かにとってのIKTさんになれるかな?、ということ。
できればいいんだけど、ちょっと難しいかな?、まぁゆるゆるとですが、トライしてみますよIKTさん。
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